行く前のイメージ(妄想)と現実(釣果)との隔たりの大きさに一喜一憂できるのが釣りである。富戸・庄吉丸は2年前に47センチの特大を含む14匹のオニカサゴを釣らせてくれた船宿。当然今回も富戸の海底はオニカサゴのレッドカーペットが敷かれていると思い込んでの釣行だったが……。
ラーク名人に深夜に迎えに来ていただいて富戸を目指す。天気予報はあいにくの雨。小田原辺りでフロントガラスを雨粒が叩きだす。降ったり止んだり。まだ小雨だが、昼前には本降りになる予報だった。後で聞くと雨は雨でも雷雨の予報になっていたそうだ。5時少しすぎに富戸港に到着する。港はまだ真っ暗だったが釣り人がポツポツとは集まり始めていた。大雨を見起してレインコートの上に防寒用のアウターを着込むというフル装備。今日は深場の勇者様、ラーク名人、I垣名人と一緒。釣り座は大好きな右舷舳。
富戸は港を出るとすぐに水深が100メートルを超える。10分と走らずに釣り開始となる。水深は120メートルくらいから。オモリが着底したら餌が底に着くのを待ってゆっくり竿を頭上に持ち上げる。持ち上げきったら今度はゆっくり下げていく。竿が海面に向いてもオモリが底に着かなければ底を取り直す。竿を下げている最中に着底したら遅れて餌が着底するのを待つ。誘い下げで落ちてくる餌にオニカサゴが気づいて寄ってきて誘い上げて仕掛けが張ると魚信が出るというイメージ。ときどき雷で空が光るバッドコンデションでの釣りだが粘り強く誘って底を取り直し続ける。
稲光があった直後に雷鳴が轟き、これはさすがにまずいかもと考えていると、ゴツゴツというオニカサゴらしい魚信あり。慌ててアワセるとすっぽ抜けるので竿を送って十分に食い込ませる。そろそろ口に針が入ったはずと感じたらゆっくり聞き上げ竿に魚の重みが乗ったらエイヤとアワセる。リールを巻きながら竿を下げエイヤともう一度追いアワセ。重量感もありゴンゴンと思いだしたようにときどき暴れる。I垣名人にタモですくったもらったのは30センチの庄吉丸で15匹目のオニカサゴ。今日も富戸は…庄吉丸は裏切らないと思ったのだが……。その後しばらく雷が遠ざかるまで休憩することに。
30分ほど雨(雹?)と雷をやり過ごして釣り再開。時速1匹ペースを期待したがその後さっぱり魚信がなくなる。やっと魚信があって重量感もオニカサゴのそれっぽかったがサメ。いい感じに引く魚信があり小ぶりかもしれないが今度こそ本命と喜々として巻き上げたら海面に姿を現したのは40センチくらいのイネゴチ。さすがにこれはオニカサゴ以外の魚と気づいたが重量感はあるので美味しい魚ならいいなと思っていたらまん丸に膨らんだヨリトフグ(ミズフグ)。ほかにも何度かフルルと穂先に伝わる微小な魚信はあったが18号のムツ針に掛かるサイズの魚ではない。
時間的にオニカサゴとイネゴチだけで今日は終わりかなと考え始めていたころ、誘い上げ中にゴンッと手元に伝わる魚信。竿を持ち上げ針掛かりさせると急に引き始めた。竿をのされドラグが出る。何度か竿をのされながらもなんとか巻き取れてはいる。オニカサゴなら未知の50センチ超だが、オニカサゴの引きではなさそう。もしかしたらと期待したのが良型のアラだった。オニカサゴとアラはポイントが似ているので可能性はなくはない。海面に銀色のシルエット。アラではなくメダイだった。3キロはありそうなご立派サイズ。深場の勇者様にタモ入れしていただく。富戸で16匹目のオニカサゴはオアズケとなったが、自己最大のメダイで溜飲を下げる。身の量は十分。
著者: へた釣り