前夜にカツオの水揚げ高日本一を目指す凄腕漁師たちの戦いを見たせいではないだろうが、釣れども釣れどもソウダガツオという悪夢の展開。肝心のイサキは魚信すらほとんどなく、魚信を出せても巻き上げ中に食ってきたソウダガツオに化ける。凄腕カツオ一本釣り師になってげんなり。
8月の剣崎沖イサキは数釣りシーズン真っ盛り。ウリンボサイズ中心にはなるがシャクれば魚信、ゆっくり巻くだけで針数コイノボリに。束超えどころか二束超えだって射程圏のはずだった。もちろん、魚にだって機嫌が悪い日はある。それでも50匹近くは釣れるものだと思い込んでいた。8月のワースト記録を調べてみると32匹。2012年と7シーズンも前、まだ束釣りを一度も達成できていなかったころの記録だ。本日、ワースト記録を更新した。たったの17匹。最大サイズも20センチくらい。ソウダガツオは船中一釣ったと思う。
台風10号の接近に伴ううねりで剣崎沖は波1.8メートルの予報だった。風はほぼ無風だったので釣行する。お盆休み前の三連休初日でしかも台風の影響は今日より明日、明日より明後日と強くなっていく。混むかもという予感はあった。金沢八景へと向かう京浜急行品川駅には竿、クーラー持参の人の姿が多数。さらに話しているのを聞くと貸し竿で釣りに行くのだと分かるグループまで数組いた。こういう日に人気の船宿である一之瀬丸が空いているわけがない。スーパーお立ち台での釣りを覚悟して向かったのだが……瀧本船長から「左舷の艫が空いてますよ」と声をかけていただく。グループ釣行の人が多く、船宿で釣り座を割り当てたのでお一人様用の席が空いていたようだ。艫で釣ることなんて滅多にないので迷わず左舷の艫へ。船は7時30分に桟橋を離れ、剣崎沖を目指す。
約1時間かけて辿りついた松輪の根には5隻くらいの小船団ができていた。船団の周りをグルリと回って魚影を探す。先行している船はあまり釣れている風ではない。船長からの指示は「18メートルから12メートルまで探って」だった。50センチ刻みのスティ0、魚信がなければスティ1、スティ2と待ち時間を長くしていく。イサキが元気な日にはこの3往復の間で魚信がでることが多いのだが空振り。コマセを詰め替えて再度スティ0からやり直すと微小な魚信があってから穂先を勢いより引き込むイサキっぽくない魚信。シラコダイだった。ウィリーにイサキより先に反応する魚がいるときはあまりよくないことが多い。魚信をなかなか出せず、ようやく1匹目のイサキを手にしたのは釣り始めて20分以上経ってから。束釣りなんて夢のまた夢な滑り出し。
イサキは船下にいるにはいるがとにかく元気がない。指示層を何往復もしてやっと魚信が出せる。困ったことにへた釣りのシャクリ方では指示層の上の方、水深13メートルから12メートルでしか魚信を出せなかった。その層だとソウダガツオも食ってくるので極めて釣りにくい。先にイサキが食ってきたはずなのにソウダガツオに振り落とされるという事故が多発しちっともバケツの中に魚が貯まっていかない。11時を過ぎた段階で9匹。ツヌケすらしていない。時速3匹ペース。お昼前にして既に心が折れる。片舷10人でコマセを撒き続けるとソウダガツオ禍が収まるとは思えない。せめてとへた釣りはほとんどコマセを撒かないように調整したが、船長によれば「全員分のコマセが艫方向に流れていた」らしくソウダガツオを一身に引き受ける運命であったようだ。かわしようがないのだから運命と割り切るほかない。船長からハリス1.7号の小針仕掛けをもらってソウダガツオ釣りは加速する。
凄腕ソウダガツオ釣り師として休まずに釣り続ける。本命がイサキだということを忘れたころにもしかして?な魚信が混じりポツポツペースでは拾える。面白いのはソウダガツオが大人しくなり、これならイサキが狙えるかもというタイミングではイサキも大人しくなってしまうこと。ソウダガツオを含めても魚信を出せない時間帯も結構長かった。そんなときは災害級の暑さでも1日元気に炎天下で釣りができる猛暑対策グッズの写真を撮ったり、動画の素材としてビチビチビチと暴れるソウダガツオを撮影したりしていた。最後まで諦めずに竿は出し続けて、イサキは17匹。ソウダガツオは数えてないがイサキの倍以上は確実に釣っている。
著者: へた釣り