威勢だけはいいんだけどさ…束超えなんて無謀な目標を掲げて臨んだ剣崎沖のウィリーイサキ。100匹のイサキで満タンになったクーラーとともにドヤ顔決めて、数釣りシーズンのイサキは楽勝だぜとほざく予定だった。剣崎沖のイサキはご機嫌斜め。一生懸命頑張ったけれど40匹どまり。
剣崎沖のイサキは厳しいよという情報は事前に得ていた。2日前に釣行したN沢達人が「悔しいイサキ釣りだった。サイズが小さく、食い気もイマイチ!」と教えてくださっていた。なのに、束狙い宣言。アホである。船が空いてて、イサキの活性がよくなっていればもしかしてと虫のよいことを考えていた。束宣言して達成すれば予告ホームランみたいで格好いいよねなんて余計なことまで夢見ていたのであるから、正真正銘のアホである。
1つ目の条件はクリアした。金沢八景・一之瀬丸に着いてみると、イサキ船の席札が結構残っている。リールを右手で巻くので取り込みしやすい右舷は、艫から2席、舳の1席が埋まっているだけで、へた釣りが入っても片舷4人と余裕がある。右舷の胴の間に釣り座を決める。ウィリーなので席の有利不利はあまりない。オマツリを恐れないで済む程度に横との間隔が開いていれば勝負できる。「片舷4人、狙えるかも」と余計なことをFacebookに書き込んだ。そのまま釣り客は増えずに桟橋を離れる。
船は剣崎沖のイサキポイントへ。船団はレッドクリフ状態で連なっていた。一之瀬丸は船団には合流せず、少し離れたポイントで釣り開始。瀧本船長が船団におとなしく合流しないときは結果がいいことが多い。期待しながら仕掛けを投入する。まずはオーソドックスに50センチ刻みで待ち3秒のイサキパターン。指示された18メートルから12メートルを探ってみたのだが、ウィリーに魚が触れてくる感触なし。イサキの活性がよくなっていればという2つ目の条件はクリアならず。
3秒以上じっと待つのは最後の手段に取っておきたいので、逆に待ち時間を短くしていく。待ち時間ほぼゼロの忙しいシャクリ方にすると、魚信が出るようになった。カイワリシャクリである。カイワリはもちろんこのシャクリ方、タチウオも同じ誘い方、イサキまで……どの魚を釣りに行っても、いつも同じ竿の操作をしている気がする。ほかの人が魚信を出せずに苦労している中、カイワリシャクリならポツポツとはイサキを拾っていける。待ち時間なしなので針掛かり率は悪いし、追い食いは発生せずに単発だけど、釣り始めて1時間で7匹。時速7匹なら半束ペースには乗った。
胴の間なので、船長とお話しながらの釣り。「反応はずっとあるのに、何か気に入らないんでしょうね」。船長ですらお手上げの一番よろしくない日によく聞くセリフだ。確かに船の下にイサキの群れはいる。指示ダナを上から下まで念入りに探っていると、イサキがウィリーに触れてくる手ごたえはある。ただし、針掛かり率が極めて悪い。竿先フルフルまでは行くのに、なかなか引き込まない。居食いしている? それとも仕掛けが張ってない? 竿を持ち上げてアワセにいったり、仕掛けにガン玉を打ってみたりといろいろ試してみたが、竿先フルフルまでいっても針掛かり率2割5分くらい。ウィリーに触れた回数に対する針掛かり率は1割以下だったと思う。12時の時点でイサキは17匹。束なんて望むべくもなくなってきた。
引き出しなんて、ちゃんと整理した方法論の持ち合わせはない。雑然と頭の中の机の上に広げてあるへた釣り印の机上の空論シリーズでさえも底を尽きはじめる。珍しく座り込んで、タバコに火を点けながら「試したいことなくなってきた」とボヤキまで出始める。どうもならん。12時半でようやく20匹を超えた。目標束とか言ってたくせにしまらない結果に終わりそうな予感に、心が折れそうになる。へた釣りにできることは、「やる気だせ~、イサキ!!」と悪態をつく(心の中でね)くらいしか残されていない。
そんな願いが通じたのか、14時を前にイサキの活性が少しだけ上がった。どれだけ足掻いても目標には届かないと分かっているのに、シャクってシャクってシャクリ倒す。ダブルも3回あり、終了までの1時間で、15匹くらい追加。時速15匹ってことは最後だけ束釣りペースに乗った。バケツの中もようやくイサキのゴンズイ玉状態に。沖上がり後、船長から「今年はこれで終わりですか?」と聞かれる。終われない。来週もたぶん行く気がする。目標は、もちろん束釣り! アホというのは懲りないものなのである。
著者: へた釣り