竿が握れればニコニコ。釣り場でのへた釣りは普段の様子を知る人から見れば奇異に見えるほど愛想がいいらしい。幸せなのである。釣果はあるに越したことはないが、取りあえず釣りができれば幸せだと思っていた……今日までは。釣りで不幸になることもあると幸福丸の船上で知る。
アキアジ遠征2012の最終日。本日は予定通り釧路の沖で根魚五目。昨日と同じ釣り物になってしまったが、不測の事態があったので仕方がない。船は釧路・第一幸福丸。昨日助けてもらった繁栄丸にお礼を兼ねて乗らなくてはいけないところだが、ずいぶん前から予約してあったのでドタキャンするわけにもいかず、幸福丸で出船。乗船場所が繁栄丸と同じ岸壁なので前を通るときは足早かつ俯き加減に。来年は乗るから許してちょうだい。サンマ漁の船なんかを見学しつつ4時過ぎには幸福丸に到着。
本日は北海道の師匠といっしょ。師匠は既に到着済みで釣り座を確保してくれていた。へた釣りは左舷大艫を譲っていただき、師匠は左舷胴。昨日のアオゾイ大漁のイメージが残っているので、今日も間違いなく釣れるはずだと思っていた。4時50分には河岸払いし、尻羽岬沖のアオゾイポイントへ、朝日が昇るのを見ながら1時間半ほど船は走る。東に向けて開けた釧路沖の日の出は何度見ても最高である。でも、どうした理由からなのか釧路は、釧路市民以外はほとんど知らないと思うが、世界三大夕日の1つになっているらしく夕日の方が観光資源的には推しらしい。確かに夕日もきれいではある。
船が走っている最中に……右舷大艫の人のタックルを見て、え!?と驚く。リールは深海釣り用のミヤエポック製で針数16本。ハリスも恐ろしく太い。釣りというより漁仕様のタックルに、これはオマツリしまくるかもと、嫌な予感を覚える。でも、釣り人はベテランさんっぽかったので、きっとオマツリしないように釣ってくれるんだろうと思っていた…というか、思うことにした。釣り場について第一投。予想通り、アッという間にオマツリ。オマツリを解く間にラインの太さを聞くとなんとPE10号。うわぁ~~~と思って錘の重さを聞くと300号。へた釣りはPE4号で錘250号(釧路の沖の標準的なタックル)なので…PE10号を使うなら理論的には625号、少なくとも500号以上の錘を付けてほしい。潮も速い上に水深は100メートル以上ある。なのに、言うにこと欠いて、「細い糸だとオマツリ解くの面倒だな」とぼそっとつぶやいたのを聞いて……こりゃ、ダメだと、釣り開始と同時にテンション下がりまくり。
とはいえ、船の上で釣りをしないという選択肢はないわけで、なんとかオマツリしないようにと気をつけながら釣りを続けた。それでも2投か3投に1回の頻度でオマツリ。しかも細い糸は面倒なベテランさんは、人のラインのことなんてどうでもいいようで、船べりに擦れようが、ロッドキーパーの金属部にラインを絡ませようが気にもしない。自分の魚は大事らしく、他人のラインは擦れるままに絡むままにまずは魚を取り込んで思い切り暴れさせてくれる。当然、へた釣りのラインはブチブチ切れまくり。しかし…どれだけ乱暴に扱えばPE4号がここまで切れるんだ!! こんな状態で釣果が伸びるはずがない。アオゾイ狙いは諦めてタラジグに。ジグは500グラムで統一……ジグの重さだけ統一してもラインの太さが違えば意味がない。当然オマツリ。ここで、船長からも信じられない発言。「ジグは500使ってよ、今日の客はなんだよ!!」。客に「なんだよ!!」はねぇだろ!!!!!!! 道具見りゃ、ラインの太さくらい分かるだろっ!! すべての客が楽しく釣りができるように指導したり、調整したりするのが船長の仕事だろっ!!!!!!!!!!!! この時点で完全に戦意喪失。TKO負けである。釧路・第一幸福丸を客から金を取って釣りを楽しませる遊魚船(=サービス業)だと思っていたのが間違いだった。ここまで書いていいのか? いいのである。北海道の師匠には悪いが、釧路の不幸丸には二度と乗らねっ!!!!!!!
まぁ、一応、釣りはしたよ。竿たたんで不貞寝してやろうかとも思ったが、北海道の師匠に気を使わせても悪いので、オマツリするためだけに竿は出し続けた。300メートル巻いてあったラインは残り80メートル。よくもまぁ、ここまでラインをズタズタに切ってくれたもんだ。よくもまぁ、ここまでラインがズタズタにされるのを放置しておいてくれたもんである。ラインが足りなくなったら竿を仕舞えるのになぁ~と思っていた(予備リールは持っていたけどw)が、よくしたもので後半はギリギリラインが足りる浅いポイントに移った(オマツリも減った)ので、沖上がりまで竿を出し続ける羽目に。生まれて初めて、釣りをしていて不幸になったよ。不幸丸の船長さん、反論があればどうぞ。東京湾の片舷20人なんてこともある激込みの船で釣っているので、オマツリの回避法はある程度心得ている。ここは東京湾じゃないというのであれば、昨日は繁栄丸で一度もオマツリしていない。どう考えても不幸丸は異常だし、異常な状態を解決しようとしない遊魚船の船長の存在はもっと異常だ。
著者: へた釣り