体に一度もメスを入れたことがなかった。抜歯の経験もなければ、傷口を縫ったこともない。就職前の健康診断でやむなく採血した22歳から30年近く一度も注射すらしたことがなかった筋金入りの病院嫌いだ。2泊3日で両目の白内障の手術せざるを得なくなって人生初の手術&入院。
10時までに入院するようにと言い渡されていたので、9時半ごろに病院の入院受付に出頭。普段飲んでいる薬を持って薬剤師と面談したら、入院する部屋に案内される。眼科はなぜか2人部屋限定(理由は不明)で差額ベッド代ありだった。部屋で荷物を整理していると看護師さんが来て血圧と心拍数、体温の測定。手術は14時からとのことで、12時から瞳孔を開く目薬が始まる。12時になると昼食が運ばれてきて、目薬も開始。30分ごとに2種類ずつ点眼され、ちょっとしみる。13時にはセルシンという不安を抑える薬を服用し、手術着に着替えて手術時間を待つ。
大袈裟なと思ったが手術室へは車椅子に乗せられて移動。ベッドに横たわると点滴を入れられ、目には麻酔効果のある目薬。医者からは「力を抜いてリラックスしてください」とのアドバイスがあるが、人生初の手術である。リラックスするのなんて無理だ。出来る範囲で肩や首などに力を入れないように意識する。麻酔が効いたら手術が始まる。眼球にメスで小さな穴を空けてそこから超音波で水晶体を砕いて吸い出し、代わりに人工のレンズを入れる。眼球が切られた感触はあったようななかったような。水晶体が砕かれ始めるとそれまで見えていた手術用のライトがぼんやりとしか見えなくなる。砕いている間にライトの見え方が変わり、あまりきれいではないが万華鏡みたい。水晶体の破片を吸い出しているときは眼球を押されている感触が分かって少し気持ち悪い。人工のレンズが嵌まると手術用のライトがぼんやり見えるようになり手術終了。時間にして20分くらいだったと思う。
金属製の保護カバーで目を覆いしっかり固定したら、車椅子に乗せられて部屋に戻される。1時間はベッドで安静にしているように言われる。横になってぼんやりしていると寝てしまった。目を覚ましたのは2時間後くらい。痛いというほどではないが、目がゴロゴロする感触があり、目を開けているより閉じていた方が楽だった。手術してない方の目でかろうじて操作できるスマホをいじったり、音楽を聴いて時間を潰していると夕食の時間に。血糖値管理のため夕食後、少しだけ院内をお散歩したが、用もなく病院内をうろちょろするのは邪魔な気がしたので、部屋に戻って寝る。夕食前にも寝ていたし、そうそう寝られるものではないと思っていたが、ほかにやりたいこともやることもないと人間、意外と寝られるもんであると知った。
翌朝は6時くらいに起床し、院内散歩。この時間なら看護師さんも忙しく働いていないので病院の隅から隅まで踏破してみた。8時になると先生が部屋までやってきて金属カバーを外してくれる。眼帯を取った瞬間に、「物には輪郭がある」ことを思い出す。ぼんやりとしか見えてなかったすべての物がくっきりと見えて驚いた。そのまま外来に移動して、眼球を1針縫っていた糸を抜糸する。抜糸してしばらくすると目のゴロゴロした感じがなくなり、目に感じていた違和感がなくなる。抜糸を終えたら朝食を摂る。12時になるとまた瞳孔を開く目薬が始まり、2日目は残る片目の手術となる。流れは全く1日目と同じだった。3日目の9時過ぎに退院の手続きをして釈放。
手術翌日で手術前よりも確実にいろんな物がはっきりとよく見える、ただし小さい文字が読みにくく、読書はまだ無理。仕掛け作りもまだ…難しい気がする。一方でパソコンの文字ならはっきり視認できるので、退院翌日から仕事は始められた。飲酒は術後翌日から、お風呂は術後4日目から可能だ。釣りへの復帰可能時期は週明けに術後初の通院なので、そのときに医者に聞いてみるつもり。度付きの眼鏡を作る前でも釣りに行けるように、寝ている以外の時間は着けておくように言われている保護眼鏡は調光偏光のものを買ってある。
著者: へた釣り