止別海岸でのアキアジ狙い2日目。本日は午前中のみで午後からは釧路へ戻る。日の出の4時30分から11時くらいまでで目標は北海道の師匠6匹、へた釣り5匹で昨日釣った9匹と合わせて20本のアキアジを持って帰ろう……だったのだが、北海道といえどもそこまでは甘くなかった。
午前3時に泊まっていた民宿をチェックアウトして、3時半には止別海岸に到着。昨年ほどではないが、昨日に比べると駐車場に車が多く、当然釣り場も混雑気味。浜に出ると既にケミホタル付きのウキルアーが描く軌跡が釣り場の端から端まで続いている。アキアジが釣れるのは空が白んでから、どうして1時間も前から膝まで海に浸かって釣り始めているかというと、朝一の時合を逃さないための場所確保のため。そんな気合が入った釣り人が実釣開始の1時間も前から50人以上いるのであるからアキアジ釣りは恐ろしい。
北海道の師匠&へた釣りも出遅れてはならじとタックルを用意したら一休みする間も惜しんでここぞというポイントに立つ。横の人との間隔は30センチくらい。周りの人と雑談したり、時々釣ってますよとアピールするためにキャストしたりしながら日の出を待つ。この日は波が少し高い。へた釣りが入ったポイントの右手を見ると、真っ暗闇なのに腰くらいまで海に使って白波と対峙している立ち込み隊が見える。怖くないんであろうか。
空が薄ぼんやりと白み始めると朝のチャンスタイムが始まる。昨日に続いて浜で最初のアキアジを釣り上げたのは北海道の師匠。お手製のグロー&アワビ張りぐるぐるサーモンの威力は絶大だ。へた釣りも師匠に借りた同じ仕掛けを使っているので時合は逃さない……はずだったのに、2つ左隣の人の竿が曲がっても、右隣の人がアキアジを掛けても、一向にへた釣りの竿には魚信が来ない。なんでぇ~~~である。全くかすりもしないうちに朝のチャンスタイム終了!
日が昇りきり、魚信が遠のいたので浜に上がって朝食タイム。ここで止別海岸の釣り人は3種類に分類できることに気づく。まずは立ち込み隊。腰まで海に使って波が来ると海水がウェダーに入るのを防ぐためにジャンプしている。少しでも遠くにキャストしてアキアジを釣り上げたいという意気込みがすばらしい。まさにタフガイである。年齢も若い人から80歳くらいに見えるおじいさんまで、波に押されながらロングキャストを繰り返す。次に膝まで水に浸かって普通にキャストしている人。本来の止別海岸の釣り方はこれが正しいらしく。「立ち込みする人がいるからアキアジの群れが近くに寄らない」と文句を言いながらも延々とキャストを繰り返す。これはこれで精神的にタフな人たちだ。そして朝の時合が終わって浜でのんびりしている人。お腹のすいたへた釣りもおにぎりを頬張って浜で休憩。朝の釣果が芳しくなかったので「今日はダメだな」と言いつつも帰る気配は全くない。
へた釣りは、白波が立っているところに入っていくのは怖くて嫌。かといって1本もアキアジを釣らずに浜でのんびりし続けられるほど釣りというものを達観していないし、釣りに関しては精神的にタフなのだ。結局浜からキャストすることにしたのだが、1時間くらい粘っても魚信はゼロ。「なんのためのウェダーだ。足だけ入るなら長靴で十分だろ」と意を決してタフガイの仲間入り。海の中をジャブジャブ歩いて立ち込み隊に合流した。波を体の正面で受けると男の急所がとても痛いという恐らく今後の人生であまり役に立たない経験をしながらロングキャストを繰り返す。波が来たら体を半身にして急所を守る。全身ぐっしょり濡れながら頑張っていると、ようやく本日初の魚信。無事取り込みに成功したのは小ぶりのオス。本日の釣果はこれだけ。魚信もこれだけだった。
止別海岸に来ると、北海道のアキアジ釣り師ってすごいなぁと驚くことが多い。海岸近くにキャンプを張って何日も釣り続けている人がたくさんいるし、80歳なのにタフガイコースで足場の悪い海の中でジャンプし続けていた人(1匹釣り上げていた)もいる。北海道の人にとってアキアジは特別な魚なんだと思う。ドラグを無駄に出してはダメという暗黙の了解のせいで、竿を折った人も2人見た(スレで背びれや尾びれに針掛かりしたときのアキアジの引きはものすごい)。立ち込みで海の中でこけて全身ずぶぬれになった人も2人ばかり(ライフジャケットを着用している人はほとんどいないので運が悪いと死ぬぞ!)。
ただ、あまりマナーがよろしくないんじゃない、と思う光景にも何度が出くわした。怖い人が1割くらいいると昨日の原稿で書いたが、あまり口汚く人を罵るのはいかがなものかと思うし、無言で下手糞は来るなオーラを放つのもどうかと思う。釣りはレジャーなんだからみんなで楽しめるようにした方がいいと思うよ。ただ、アキアジ釣りは一部の人にとってはレジャーではないようで、釣ったアキアジのメスからイクラだけ取り出して捨てていく人がいる。釣りをしている足元に腹を割かれたアキアジが流れてくると非常に気分が悪い。あと、対岸の方が釣れていそうだからといって線路の鉄橋を渡るのは スタンド・バイ・ミーのような冒険が許される年じゃないんだから止めた方がいいと思うぞ!
著者: へた釣り