向いてねぇ~っと言い出すと、釣り全般向いてないんじゃないかと考えなくてもいいことを考えてしまいそうなので、イワシメバルは向いてないということにしておく。良型を…できれば尺超えをと鼻息荒く参加したイワシメバル愛好会の仕立船であまりの魚信のなさに呆けてホゲて凹む。
愛好会会長の中川名人に三浦海岸駅まで迎えてきていただいて、金田港・金寅丸からイワシメバル仕立て。片舷3人で6人のゆったり出船でへた釣りと中村名人がイワシメバル初挑戦でほかの4人は経験豊富な達人さん。釣り方が分からなければ左右を見ればどうすればいいのか分かるという入門には恵まれた環境のはずだが…達人さんをもってしても魚信ほとんどなしという釣況で、参考にすべき釣り方が見当たらずに船上ですっかり迷子になってしまう。結局最後まで迷子のまま。進むべき道が見当たらず心のブレイカーが落ちた。
イワシがメバル釣りには少し大きくなってしまったという情報は聞いていたが、10センチくらいとヒラメ用の大きさ。メバル用にはワカサギくらいの大きさの物がよいそうだ。でもまぁ船宿が用意した物なのだからなんとかなるだろうと考えていたが、メバルが一口で飲み込めないためこれが苦戦の一因だった気がする。イワシは下顎から上顎に針を通して口が開かないようにする。下顎の固い部分にしっかり刺して、脳みそに針先が触れないように上顎は先端付近を刺し貫く。イワシを弱らせないようにゆっくり底まで落とし、1メートル巻き上げて待つ。誘いを兼ねて20秒に一度くらい底を取り直す。メバル釣りなのですべての動きは太極拳で、粘り強くやればそのうち…と思っていたが……。
何度か魚信はあった。針が刺してある頭だけ残して食べられたり、内臓と目玉だけ食うなんてグルメな齧り方をされたり、歯型を残されていたり、胴体でバッサリ切られていたり。メバルは歯がある魚ではない。どう考えてもメバル以外の何かにやられてしまっている。首の辺りにくわえたようなあとがあったのが唯一メバルっぽいやられ方だが姿を見たわけではないので確信はもてない。イワシはすぐに弱るので仕掛けを回収するたびに付け替える。誘いはイワシまかせなので、元気に泳いでいてもらうに越したことはない。
ときどき魚がかかった。釣れてくるのは餌のイワシと同サイズのベラだったり、ネンブツダイだったり、キタマクラだったり。メバルより口の小さいコイツらが釣れるんだからメバルだっていつかはと考えていた。実際、メバルかもという魚信が三度あった。むこうアワセが基本と知っているので引くにまかせて手元までしっかり重みが乗るのを待ってると……へた釣りの竿はイワシメバルに適してないのかもという放され方を2回した。穂先からしっかり曲がっていき曲がりが胴にまでという段階でイワシをもぎ取られてしまった。胴の部分が固すぎる? 三度目の魚信は竿を送ってドラグを出して対処したが、今度は根にハリスを擦られて逃げられた。竿の弾力で勝負しようとするとダメ、竿を送ってもダメでは手がない。胴まで素直に曲がってためていなせる竿が必要かも。
何も起きなかったというわけではないが、魚信が遠く、せっかくの魚信がことごとくこれでは、心を削り取られていく。船上で手を打てる修正点らしい修正点も見当たらないので、釣り始めて3時間くらい経った10時ごろには、今日はダメだなと呆けだし、釣りをするテンションではどんどんなくなっていく。淡々と心を込めずに手を動かすのは得意だ。へた釣りAIの全自動釣り技術で最後までやり通した。お持ち帰りはカサゴが3匹のみ。イワシメバル…良型メバルへの期待が大きかった分、ホゲて凹む。下船したらレタスとキャベツをいただく。これが本日唯一のよかったこと。
著者: へた釣り