俺が行ったら終わることは珍しくないが俺が行く前に終わっていた。先週まではシマアジ20匹超えの好漁にいくら下手でも2、3匹は釣れるだろうと釣行日を心待ちにしていたが、数日続いた時化で海の状況が変わってしまった。シマアジどころか魚の全くいない海で荒波にもまれる。
深夜に深場の勇者様に迎えに来ていただいて白間津・海正丸へ。先週の釣果までしか確認していなかったへた釣りは意気揚々と車に乗せていただくが…勇者様の顔がどこか浮かない。「昨日はシマアジどころかなんにも釣れなかったみたいですよ」とそのとき教わる。「時化で海の中が洗濯槽の中みたいな状態で魚がみんないなくなった」とのこと。しかも洗濯槽の中のような時化はまだ続いており「何も釣れない可能性大」でも「釣れれば遊泳力のある3キロ級」。3キロ級がなにかの間違いで釣れてくれると信じて白間津へと向かう。
船着き場は風裏になっているようでほぼ無風で時化の心配はないかもと喜んだが、出船して港を出た瞬間にぬか喜びだったと分かる。10メートル近い風と2メートルはありそうな深いウネリ。船の上下で仕掛けを付けることすら難しく船が止まるまで船酔いしないようになるべく遠くを見ていた。航行中は辛くても船が止まれば…という期待も虚しく、ポイントについてもあか~んな海。タナは「13メートルから10メートル」という指示がある。海が荒れているときはスティを長めに取らないと魚信を弾きやすいのでスティ10秒以上の超スローなシャクリで釣り開始。魚の気配なし。我慢していればそのうちとシャクリ続けたが……。
食い気のある魚がいないのではなく、船下に魚が全くいないのでは?と疑いたくなるほどに魚が仕掛けに触れてくる感触がない。マメにコマセを入れ替えて魚を寄せるしかないが…コマセに反応する範囲にすら魚がいるのかどうかすら怪しいほどに何も起きない。スティを20秒にして食わせの間を与えてみるなどできる工夫は限られている。釣り始めて30分以上経ってようやく穂先に小さく生体反応がでる。15センチくらいの小アジ。「やったー、魚だぁ!」って喜んじゃったもんね。続いて小アジ以上に微小な魚信があってスズメダイ。普段なら釣ったうちに入らない小魚を釣ったと報告せざるを得ないくらい魚がいなかったと察してほしい。
スズメダイを釣ってから1時間半ほど完全に沈黙。時化で魚信が遠いと船酔いリスクが上がる。みぞおちの少し上までムカムカが込みあげてきて、頭がぼーっとし始める。魚が釣れることが特効薬だが釣れるどころか魚信すらなしでどんどん体調が悪くなっていく。立って釣るのではなく座って釣ればいくらか楽なことに気づいたが座って釣りをする習慣がないので立ってシャクリ続ける。フォール中に竿先をモゾモゾさせる魚信があり、根掛かりの予兆かもとリールを巻くと小アジよりはマシな引きをする魚。海面に黄褐色の魚体。色からしてカサゴの仲間かな?と思ったが25センチくらいのアカメフグだった。本日唯一の釣果らしい釣果だが食い意地が張っているせいで死ぬのは嫌なので船長に進呈する。
その後も長い沈黙。もう1匹だけ小アジを追加しただけでどうにもならない感が凄まじい。それでも頑張ってシャクリ続けたが何も起きず。急に浅くなって根掛かりする。結構ガッチリハマってしまいラインを掴んで外す。無事重みを手に感じてビシロストは回避できた。再度根掛かりしないように慌ててリールを巻くとベインという嫌な音。ラインが穂先に絡んでいたようで竿先5センチほどが折れた。SHIBUKI F191はシマアジを釣ることなく終了。船酔いに耐えて魚信がなくても頑張っていた心もぽっきりと折れた。急激に気分が悪くなって釣り座にひっくり返る。座っていればそれ以上は悪化しないので置き竿&たまにコマセを詰め替えて沖上がりの時間までじっと我慢。下船後に供された船宿のうどんが胃に優しくって生き返った。
著者: へた釣り