2019年から2020年にかけての年末年始は実家のある大阪で母と合流し、石切劔箭神社の近くに宿をとり初詣を兼ねた小旅行へ。石切へと移動する前に年越しそばをと寄ったのが難波・源氏。百貨店でもお持ち帰り用の生蕎麦を販売している有名店。老舗おそばのお味は期待に違わず。
裏なんばの一角、その昔は座裏、あるいは難波新地と呼ばれていた旧・新歌舞伎座の裏手の高速道路のガード下に店はある。大きな店ではない。この店を目当てに行かなければ見落としてしまいそうなほど。白ののれんに小さく「源氏」。路上に「十割そば」と書かれた灯篭状の看板が1つ。インバウンドでにぎわう大阪の街らしく、そばについての説明が英語でも書かれていた。東京では有名店の年越しそばといえば開店と同時に大行列となることが当たり前だが、大阪はうどん文化圏の中心で蕎麦食いは少ないらしく開店15分前で先客は2組のみだった。
大晦日なので年越しそば用の特別メニューだった。暖かい蕎麦は迎春と開運の2種類。迎春の具は、しいたけ、水菜、おぼろ昆布、たけのこ、かまぼこ。開運にするとこれに天然大海老天ぷらが付く。関西風の透明感あるお出汁に細切りのお蕎麦。大海老天ぷらは尻尾が丼ぶりからはみ出す。
ざるそばを頼むとそばつゆだけではなく少量の塩が盛られた小皿が付いてくる。そばはつゆを付けて食べるのが一番美味いと信じているので、そばだけ食べるだとか打った水だけで食べるなんて食べ方はあまりしたくないが、ここまでお膳立てされると無視する方がへそ曲がりに感じてしまう。ひと手繰りしたそばの先に塩を少量付けてすするとそばの風味と甘味が分かりやすかった。
関西(福井県の方だったと思う)では年越しそばはおろしそばで食べることが多い。源氏でも辛味大根おろしそばが供されていた。辛味大根はおそばの薬味として相性がよいのはもちろんだが、そば湯を入れて少し温めた状態にするとこれに勝る贅沢はないという気分を味わえる。
著者: へた釣り