カンパチってショゴやんかって言うんじゃない!! 雪が降りけあらしが立って三途の川みたいになっていた久里浜沖から洲崎沖を経由して館山沖に至ってやっと手にした高級魚だ。こんな日に釣りに来るんじゃなかったという後悔を吹き飛ばしてくれた一尾だ。沖上がり15分前のドラマである。
数日前まで午前中は少し雪がパラつくかもという予報だったが、直前に曇りに変わったので雪は降らないと思い込んでいた。三連休の初日は積雪予報で多くの船宿が出船中止、2日目は観音崎を越えると15メートルの強風予報で釣行を回避。三連休最終日の今日が一番風が弱く釣行に適していると予想したのだが……これが大外れ。京浜急行品川駅のホームに竿持参の人はへた釣り以外に一人もいない。台風前日にだってもう少しアホな釣り人(へた釣り含む)がいたのだが……。ホームで電車を待っていると雪がぱらつき始めた。積もるほどではないものの……雪が降ると出船中止になることがある。すぐやむから大丈夫と信じて金沢八景・一之瀬丸へ。釣り物はマダイ五目改めアミ五目冬の陣。左舷の大艫が空いていたので迷わず札を取る。無事出船。
マダイ五目船の船長はイサキでお世話になっている瀧本船長。釣況を聞くと久里浜沖でイシダイが好調なようで6匹獲った人もいるとのこと。タックルはマダイ用の物とアミ五目(ウィリー)用の物を持って行っていた。どちらが適しているかと相談すると、久里浜沖ではマダイのタックル、洲崎などに南下したらアミ五目のタックルがよいとのことだったので2本とも準備する。最初のポイントは久里浜沖。船が速度を落としたのでキャビンから外に出てみると、海面からもやもやと湯気が立っている。けあらしだ。三途の川を連想させる姿になった久里浜沖でマダイ&イシダイを狙って竿を出す。コマセはオキアミで仕掛け長は6メートル~8メートル。仕掛け長分+2メートルくらいを探ってみたが何も起きない。へた釣りだけでなく船中手のひらサイズのシマダイ1匹で10時に久里浜沖を離れ南下することに。
行き先は洲崎沖で、イサキの群れを探してみるという。洲崎沖も久里浜沖ほど酷くはないがけあらしが立っており視界不良。ポイントは水深80メートルで、「70メートルから60メートルに反応あり」との指示が出る。10メートル幅探れるなら迷わずにウィリー仕掛けを投入する。コマセはアミコマセに。70メートルから50センチ刻みで20回シャクる。スティ0は不発、スティ1秒で穂先をキュンと持って行く良型イサキの魚信。仕掛けの張りを意識しながらゆっくり巻いて追い食いを狙う。再度、竿先が引き込まれて追い食い成功。尺には届かないが25センチ以上のイサキのダブルでスタート。その後も落とせばバリバリという食いでこそないものの頑張ってシャクれば魚信はあり、洲崎沖でイサキを10匹確保。
魚信はあるのでこのまま洲崎沖で釣り続けるのかと思ったら、瀧本船長から「次は館山沖に移動します」とのアナウンス。アジなどイサキ以外の魚を狙いに行く。底をやればアマダイのチャンスもあるポイントだという。館山沖に移動したころから天気が回復しだいぶ釣りやすくなってきていた。アマダイが欲しいので仕掛けをウィリーからオキアミの3本針に変える。ビシが着底したら1.5メートル底を切ってフワフワと誘う。魚信がなければ50センチ刻みでフワリと(オキアミなのでソフトに)持ち上げて行く。持ち上げ続けてアジのタナまでくればアジが釣れるという二兎追う者釣法。アマダイの魚信はなかったがアジは5匹。さらにフワリとシャクった直後に穂先をグンッと持って行くいい魚信。アマダイのゲストでこの引きはもしかしてとカイワリ!? 大事をとって手巻きで巻き上げたが少しずつ抵抗が弱まっていく。40センチ級のアカイサキだった。味噌漬けにして美味しいのでこれはうれしい。
館山沖の漁礁などの周りのポイントを転々と探っていく。マダイやメダイの実績もあるポイントとのことなので期待は高まるが、反応はあるはずなのになかなか魚信がでない。15時の沖上がりの時間が近付いてきている。本日の刺し盛りはイサキとアジの二種盛りで終わりかなと諦めかけていると、シャクった直後にズドン。竿を送ってドラグを出さないとハリスを瞬殺されそうな引き。メダイがいると聞いていたのでそれかな? ドラグが止まって巻き上げようとするとまた走りだす。青物っぽい引き方なので無理せず慎重にやり取りする。海面に現れたシルエットはイナダより体高がある。カンパチだった。本当はショゴだけど標準和名がカンパチという魚には違いない。お刺身最強魚の1つである。イサキとアジにカンパチが加わると高級感がぐっと増す。釣果はカンパチ×1、アカイサキ×1、イサキ×10、アジ×5で17匹。マダイ五目改めアミ五目冬の陣初体験の感想はというと、「マダイやイシダイがダメでも瀧本船長がなんとかしてくれる五目だね、これは」。
著者: へた釣り