船を降りるとき金沢八景・一之瀬丸の社長船長から「あーとか、いーとか、叫んでましたね」と指摘される。へた釣りのタチウオ釣りは騒がしい。あっと驚き、いーっと癇癪、うーんと悩んで、えーっと悔やむ、おっと喜ぶ。船上で発する声のほとんどがあ行の感嘆詞。頭の悪い人になる。
台風の置き土産なのか? 西日本に甚大な被害をもたらした台風21号の日から風がやまない。海上だけでなく街中でも風が強く歩きにくいと感じる日が続く。本日は事前の予報では凪だったが、少しずつ予報が悪くなる。風が強まる午後を避けて、午前タチウオに行くことにしたが、朝家を出ると既に強めの風。街路樹の枝が揺れていた。金沢八景駅に着くと海が近いせいでさらに強風。風速7~8メートルは吹いている。ただでさえへたクソなタチウオ釣りである。風波で魚信が取りづらくなると撃沈必至。風を嫌ってか片舷6人。オマツリを心配せずに済む。一之瀬丸パターンで舳が空いていたので左舷の舳で釣ることに。
船長は朝受付をしてくれる一之瀬社長だった。見知った顔だし、話したこともあるのでアウェイ感は薄らぐ。船長からのアナウンスは「走水方面に向かいます」。猿島が近付き船は減速する。タチウオ船団の姿は……ない。薄い反応が散らばっているらしく、あっちにぽつん、こっちのぽつんといる。こういう日はよろしくない。減速して反応を探すが、船はいっこうに止まれない。止まりかけてはまた走りだすを繰り返す。観音崎方面に小規模な船団ができはじめた。船の向いている方向からしてそれに合流するのかなと思っていたら、「10分ほど走ります」とのアナウンス。船は向きを変える。南へではなく北へ。八景沖へと戻ってきた。
港を出てから30分近く経ってようやく釣り開始。指示ダナは「25メートルから20メートル」だった。水深が浅いので30センチ幅でフワリと誘ってハンドル半回転巻くという誘いで釣り始める。リズミカルに誘うのが大事だ。魚信はすぐにあったコッと餌に歯が立った手応えがあり穂先をグッと持って行く。タチウオ釣り毎朝のお約束でビックリアワセをしてしまう。本日最初のあっ!! 魚信があっても同じペースで誘い続けるのが基本と知っているのに毎回必ず最初の魚信は逃すのだがら船上のへた釣りは本当に頭が悪い。2度目の魚信で1匹目。サイズは指3本くらい。このあとは飽きない程度に魚信はあるが、例によって低打率にあえぐ。うーんとえーっを繰り返す。でも、いーっとなる前には釣れてくれる。
東京湾にタチウオの群れはこの辺りにしかいないらしく。どんどん船が集まってきて船団が出来始める。タチウオはバリバリという食いではないが頑張って誘えば餌を追ってくれる。そして何かの間違いで針掛かりしてくれる。半日船の目標であるツ抜けは狙えそうというペースに。素直に針掛かりして穂先をギュ~ンと持って行ってくれるタチウオもいれば、餌への甘噛みを繰り返しなかなか食い込まないヤツも。その場でシェイクやゆっくり聞き上げなどあれこれ手を尽くしたが掛かることもあれば駄目なときもある。確率よく針掛かりするという方法は最後まで見つからなかった。
10時30分を過ぎると風が強くなった。白波が立ち始め船の揺れが激しくなる。船の揺れの影響をなるべく受けないように船べりには体を預けず、体で揺れを吸収する。魚信が取りにくくなり、針掛かりさせるのがさらに難しくなる。なんとか針掛かりさせテンビンを手に取ろううとしたとき、プシューという異音。お腹が少し締めつけられる未知の感触。ライフジャケットが膨らんでしまった。えーっである。どこかに膨らます用のヒモが引っ掛かってしまったと思われるが、一瞬何が起きたのか分からなかった。魚だけは逃すまいと竿とテンビンを船中に投げ入れハリスを手繰る。タチウオは無事ゲット。膨らんだライフジャケットが邪魔なので脱いで、仕掛けを再投入しようとすると……本日2度目のえーっである。異次元O塚工房作タチウオSPの穂先が折れていた。
折れた竿で最後まであきらめずに誘い続けた。波で船が上下するため、海中の仕掛けが張れていないことが多いらしく、餌だけ取られたり、針を飲みこまれてハリスを切られてしまったりする。数を伸ばせず11時30分少し前に終了。数えてみると9匹。朝、反応が見つからず船が止まれなかったときには釣れても2、3匹かもと覚悟したことを思えば、半日船で9匹はまぁまぁではないかと。指2本は混じらず、3本~3.5本でそろったのがうれしい。120センチ超えのドラゴンタチウオダービーサイズは不発。
著者: へた釣り