9月は母の誕生月。毎年小旅行をして祝うことにしている。高原ロッジ・メープル猪名川へ。宝塚の奥、稲名川沿いの里山に宿はある。北には丹波、南に瀬戸内。お料理の写真を見て秋の海の幸、山の幸を堪能できるのではと期待しての予約。子持ち鮎、栗、カマス、松茸を堪能する。
台風17号が発生し西日本に接近するのではと危惧していたが、風も雨も少し怪しいかな?というくらいで、風がある分かえって過ごしやすかったかもしれない。お散歩兼ねてのハイキングも雨に降られることなく楽しめ(苦しめ?)た。地図の読めない中年男がハイキングコースを外れて遭難しかけるというアホな動画を公開中だ。ハイキングを終え、温泉で一息ついたら夕食の時間だ。
八寸は穴子牛蒡八幡巻き、とろ鯖小袖寿司、焼き栗など。明石のアナゴは旬を外しても脂の乗りがよく一年中楽しめる。丹波といえば栗の産地として有名で、1粒だけとはいえ食べられてうれしい。とろ鯖は関西らしくきつめに酢がしてあり懐かしいお味。これらの料理に合う日本酒のセットをいただく、奥丹波の純米生酒、野条穂という丹波地方でかつて作られていた酒米で作られた野条穂純米吟醸、冷やおろし。本来は3種のセットなのだが宿のご厚意で稲名川町で作られているという純米酒の猪名の露までいただく。お刺身は鯛とサーモン、紋甲烏賊。鯛のお刺身と日本酒が実に合う。
椀物にもうれしい食材。海老真薯のお吸い物だったが、2切れだけだが松茸と酢橘の輪切りが浮いていた。今年初の松茸を土瓶蒸し気分で味わう。炊き合わせは子持ち鮎。脂の乗りでは夏が旬の鮎だが、落ち鮎と呼ばれる子持ちの鮎は秋が旬。卵がお出汁を吸い食感も面白いのでなんとも贅沢な煮物となる。焼き物はかます杉板柚庵焼き。秋のカマスも「嫁に食わすな」と言われる魚の1つである。文句なしに美味い。銀杏豆腐、椎茸、むかごまで、海と山の秋を一気に楽しめる一皿だった。
強肴は黒毛和牛の焜炉焼きだった。稲名川町の周辺には神戸牛、三田牛、但馬牛と名だたる和牛の産地がある。軽く火を通してステーキソースかわさびでいただくと、舌の上でトロリと蕩けていくのが分かる。山椒ちりめんを混ぜ込んで食べる釜飯、梨と葡萄のデザートまで秋を満喫できる懐石だった。
著者: へた釣り