昨年の9月に鮭を釣りに行ったとき、浜辺は大混雑で、オマツリして怒られると怖いので、横の人と仲良くなっておこうと「僕、鮭釣るの初めてなんですよ」と目いっぱい愛想よく声をかける。返事は「鮭? あぁ、内地から来たのか?」。北海道の人はアキアジを鮭とは絶対に言わない。
アキアジ……秋に釣れる美味しい魚だから「秋味」なんだろうか? 市場にお土産を買いに行っても、鮭は「アキアジ」という名前で売られていて、標準和名なんて知ったことか、アキアジは北海道のものという強い意志を感じたりする。標津サーモン科学館は、本当は標津アキアジ科学館にしたいけどさすがにアレなんで、英語にして誤魔化した??
エゾメバルは「ガヤ」。岩場や船から釣れ始めればガヤガヤ釣れるからそう呼ばれる。メバルといえば東京では専門の船が出ている釣魚。船でエゾメバルが釣れて、その一種だからさぞ美味しいに違いないと喜んでいると、船長さんがマイクで「ガヤならいらんっしょ、帰るよ~~」と、誰の同意を得るでもなく船のエンジンをスタートさせた。
ガヤ同様、北海道では釣魚としての地位が著しく低いのが「アブラッコ」。アイナメのことだ。港近くのテトラ際で50センチ級のアイナメの数釣りが楽しめたりする。でも「アブラッコは寄生虫がいるし、美味しくない」というのが北海道の人の感覚。2、3匹ならいいけれど、あまりたくさん持って帰るのは禁止される。アイナメはアイナメでもウサギアイナメという種類のようだが、味はそう大差ないように感じる。
このほかにも、ムラソイが「ハチガラ」だったり、ウグイが「アカハラ」だったり、コマイが「カンカイ」だったり、マツカワガレイが「タンタカ」だったり。
■「ゴミ投げといて」って釣り場にゴミを投げたらあかんでしょっ!魚の名前以外にも釣りをしている最中に出会った言葉で「????」となったのが「ゴミ投げといて」。釣り終えて、後かたずけ。コンビニ袋に仕掛けやら餌が入っていたプラスチック容器やら、ペットボトルやらを詰め込む。車に荷物を運ぶ段になって、コンビニ袋を手渡されて「ゴミ投げといて」。……その辺に放り投げろってこと? 釣り場はきれいに……なはずなのだが。北海道弁で「ゴミ投げといて」はちゃんと「ゴミ箱に捨てておいて」という意味だと教えてもらうまで、ゴミを抱えて途方に暮れる。
サクラマス&海アメ狙いで砂浜に四駆の車を乗り入れたときのこと。運転していた人が、「うわっ! あずった!」。あずったという言葉の意味が分からなかったのでとんでもなくマズいことが起きたのではないかと、心臓がドキドキし始める。なんてことない、あずったというのはタイヤがスタックしたってだけのことだったのだが、意味を類推し難い、あるいは曲解してしまう言葉に出会うと人は軽くパニックを起こすってことをこのとき知った。
著者: へた釣り