ウキフカセでも船釣りでも、食い渋りのときは細ハリスが有利と言われる。釣りをする人が経験則から導き出した結論だし、実際、細ハリス+小針、小餌は効果を実感できることも多い。でも、魚って目が悪いって聞いたこともあるんだけど……見えないけど細い方がいい、その理由とは。
ウキフカセ釣りでは、対象の魚を自分の竿さばきで取り込める自信があるギリギリの細さのハリスを使うのが基本。大型のメジナ狙いだから2号のハリスを使いたいけど、食ってこないから1.2号に変えたらハリスが切れたなんて経験がある。ボートからのシロギス狙いでも1号のハリスを使っていたら全然魚信がなかったのに0.6号に仕掛けを変えたらバンバン食ってくるようになったなんてことも。
一方で魚の生態を解説した本を読むと、例外なく魚は目が悪いと書いてある。水中に棲む魚と人間の視力を比べることに意味はないかもしれないが、人間の視力の測定法を指標とするなら魚の視力は0.2以下。魚にハリスが見えるのは10センチくらいの至近に接近してからだと言われている。たとえハリスが見えたとしても、魚にとって「ハリス=危険」という認識があるとは思えない。ハリスが危険という認識が魚にあるなら、カワハギやフグなどのホバリングする魚は釣れないということになる。
■針&ハリス付きの餌に違和感を抱かせないのが釣りの基本では、なぜ細ハリス? どうやら魚は対象物がボンヤリとしか見えていない一方で、対象物の動きが捕食対象のものであるか、どうかを鋭敏に察知する能力には長けているようだ。水中のハリスは抵抗である。自然に漂い沈下するオキアミなどの餌の動きを阻害する要因に過ぎない。極端な例にすると針金の先端に針を結んで餌を付けたところで、よほどのことがない限り魚は餌を食べない。メジナはコマセと同じように自然に沈下するオキアミになら飛びつくし、自然に海底を漂うイソメにシロギスの捕食スイッチが入る。
ボンヤリとしか見えてないものが、動きが自然なら餌に見える。ルアーはまさにこの魚の習性を利用した釣りだし、へた釣りが研究中のイサキのウィリー釣りも化繊巻き針をアミエビだと魚に見誤らせる釣りだ。もちろん、魚が餌を認識する方法には臭いや色という動き以外の要素もある。ウィリー釣りの場合、本物のアミエビをコマセとして撒くので臭いはOK。色はその日、その日によって当たりの化繊色があるようで、名人は、何種類もの色、それを何重に巻くかを変えた針をたっぷり準備して釣りに臨むものらしい。
著者: へた釣り