羽田・かみやの釣果報告でへた釣りのクロムツの釣り方を「誘い探り釣法」と書いてもらった。遊魚のプロの命名なわけで、必殺技っぽくてうれしい。調子に乗ってクロムツの釣り方メモを書く。人生で一度だけしかツ抜けしたことがない人のメモなので眉に付ける唾はいつも以上に多めに。
深場の釣りで一番大事な道具は竿なんじゃないかと思っている。手元から200メートル以上離れた場所にあるエサに魚が食ってくるわけで、ある程度オートマティックに針掛かりに持ちこめ、巻き上げ中にばらし難い竿でなくてはならない。昨季、魚信はあるのにクロムツがちっとも掛からないと悩んでいたが、竿を変えただけで、明確な魚信があれば100%に近い確率で針掛かりするようになった。使っているのは「海人アカムツ225」という竿。中深場用として売られている竿よりも柔らかめでクロムツを違和感なく食いこませている。巻き上げ中もしなやかに曲がるのでバラしが少ない。
仕掛けは枝ス70センチで枝間140センチの5本針の物を使う。仕掛け全長は8.4メートル。クロムツは底べったりにいるわけではなく、結構浮いているので針数は5本あった方が探りやすい。本当は8本針でもいいかもと考えているのだが、8本針にすると投入の難易度が一気に上がる気がするので、5本針を基本に考える。サバの泳層がクロムツのいそうな層に近いときは3本針にした方がサバに蹂躙されるリスクを軽減できる。また、枝スを太くすると途端に魚信が減る。枝スは太くても8号までがいい。
クロムツがどのタナにいるのか広く探るのが重要でオモリが着底したら10メートル巻き上げる。一番上の針の位置は底から17メートルくらいになる。クラッチをオフにしてスプールを抑えたり、離したりしながら50センチくらい刻みで仕掛けをストンと落としていく。魚信の多くはストンと落とした後、5秒以内に出る。ステイ時間は長くても10秒にして、テンポよく誘い落としていってクロムツにエサの存在を気付かせる。底にオモリが着いたら10メートル巻き上げて最初からやり直し。これを辛抱強く繰り返す。
クロムツはあの大きくつぶらな目でエサを探していると想像している。動いている物の方がよく見えるというのは目でエサを追う魚全般に共通の傾向だ。では、どうして誘い上げではクロムツの反応が悪く、誘い下げだと食ってくるのか? ヒントをくれたのは例によって深場の勇者様。「エサが横になれば食いが良くなる」。エサには重みがあるので通常の状態は幹糸に対し少し垂れ下がり気味になっているはず。仕掛けを下げると枝スは上に上がり、そこからまた沈みだすわけだが、その間にエサが横になっている(泳いでいる魚のように水平になっている)間ができるはず。その瞬間にクロムツが食いついてきているなら、誘い上げより誘い下げが効果的で、誘い下げて5秒以内に食ってくるという2つの傾向の説明がつく。
クロムツはアワセがいるのかいらないのか……魚信を弾かない竿ならアワセなくてOKじゃないかと思う。クロムツの魚信の多くは竿先のテンションが抜けて持ちあがり、何度か竿先をガクガクと揺さぶるように出る。ここで掛けにいってやろう竿を持ち上げると針掛かり率が悪くなる。放置しておく方がいい。竿先がガクガクしているのはこの時点で既に針掛かりしているのでは?と想像する。竿先をガクガクのあとでクロムツの重みが竿先に乗ったときに竿先を少しだけ持ち上げるくらいで針掛かり確定と考えてよいように思う。
追い食いも難しく考えないで、最初の魚の針掛かりを確定させたら、しばらく同じタナで待っているだけで来るときは2匹目、3匹目が食ってくる。針に掛かったあとのクロムツは意外と大人しく、針から外れちゃった?と不安になることもあるが、外れてはない。巻き上げ始めるとちゃんと魚の手応えが戻ってくる。巻き上げ中は水圧の変化でクロムツが浮き始めたように感じたら少しだけ電動リールの巻き上げスピードを上げるとバラシをさらに少なくできる。
著者: へた釣り