“気になる”が2つ重なると好奇心は抑えきれない。店名がBar Marlows。レイモンド・チャンドラーの小説に登場する探偵の名だ。お店がお休みの日に掲げられている「Sorry!!! Gone fishing」という看板。ハードボイルドな釣り人がマスターをやってると思われるバー。行ってみるしかないよね。
恵比寿駅から明治通りに出、広尾方面に5分も歩けばその看板が見つかる。Bar Marlows。ハードボイルド小説を代表する探偵の名の付いたバー。フリップ・マーロウと言われてもピンと来なくても「男は強くなければ生きていけない。優しくなければ生きる資格がない」、「さよならを言うのは少しの間死ぬことだ」などのセリフは聞いたことがあるのでは?
マーロウのスペルは正しくはMarloweと最後にeが付くが、まぁ、細かいことは気にしないことにする。作者のチャンドラーは相当のお酒好き(というか依存症?)で、作中のセリフにそのことが色濃く投影されている。「酒を飲まなければ世界の色が薄れて行く」。1杯目はマーロウ気分を味わうために糖質オフを解除して、ギムレットを頼む。
落ちついた雰囲気のバーなので騒がしくはできないが、マスターに「ごめん、釣りに行ってます」看板の話を振ってみると、フライとテンカラが好きで、長野県や岐阜県の渓流にイワナやヤマメを求めて釣行しているという話を聞かせてくれる。初めてのお店だったので、互いの人となりを探り合いながらの会話であるが、釣りに関する話だけは、どういう釣りを好むのか、どういうポリシーで魚に対峙しているかを、落ちついた口調ながらも熱く語ってくれる。釣りバカだってことはビンビン伝わってくる。ハードボイルドな釣りバカの店……悪い酒場なんてない。悪くない酒場と特別な酒場があるだけだ(チャンドラー風w)。
著者: へた釣り