ふふふなんて上品な感じじゃない。かといってぐふふと下卑た感じはそぐわない。白身のトロと称されることもあるのがアカムツである。口に入れると脂の旨みにおっという驚きがある。旨みは口の中に広がり、舌の上で蕩けて薄れる。消え去る瞬間にむふふと変な声が出るのがアカムツ。
まずは半身を炙り刺しに皮際の脂の味を堪能できる食べ方だ。バーナーで炙ると、皮が縮んで少し反り、茶色い脂が皮側の表面に滲みだしてくる。この脂が絶品。のどぐろラーメンの出汁はこの脂を希釈したもの。薄まった出汁であれだけ旨いのだからという期待は裏切られない。口の中にぱっと上品な脂の旨みが広がって至福の時が訪れる。すぐに咀嚼するのではなく、舌の上にしばらく留めおくのが正しい気がする。脂の旨みは少しずつ薄れていく。旨みが去る前に箸は既に次の一切れに伸びている。醤油もわさびも邪魔という気がする。何も付けずか付けても塩が正解だと思う。
残る半身は塩焼きだ。「アカムツの真価は塩焼き」と言われてそれでも塩焼きでは食べないというほどには臍が曲がってない。ほっくりと焼きあがった身は全体にアカムツの旨みである脂が回っている感じで、安定の美味しさ。脂の旨みをダイレクトに楽しむ炙り刺しと、脂の旨みを含んだ身全体の美味しさを味わえる塩焼きの味の対比は面白かった。食感もよく身離れもいいのでこれぞ超高級塩焼きというお味だった。真価である塩焼きを超える調理法は干物であるらしい。次はアカムツの干物なんて超贅沢品に挑戦してみるかと、その野望がかなうの何年後?なことを考え始めている。
著者: へた釣り