夏場に釣れる指4本以上の良型タチウオは抱卵しておりタチコを取れる。同じサイズのタチウオで白子 (精巣) が発達した物は見たことがないので良型はすべてメスということになる。タチウオは雄性先熟型の性転換をする魚と書かれている資料もあるがへそ曲がりなのでちょっと疑っている。
実は魚の性転換に関しては性決定遺伝子が見つかっていない。性転換の契機となるのは生殖腺刺激ホルモンとされており、例えば同じ縄張り内に一番大きなメスになると白子が成長するホルモンが分泌されオスになるなどといった具合に性転換が起きる。マダイはメスからオスへ、クロダイはオスからメスへと性転換することで知られているが、成長するに伴い雄性ホルモン、雌性ホルモンのいずれかが優勢になることで性転換が行われるようだ。タチウオは大きく成長した物に雌が多いということに異論がないが、性転換すると書かれている資料に早い個体では1歳魚から産卵することもあるともあるので混乱する。タイ科のように体の大きさで雌雄がほぼ決まっている状態ではないと読める。
釣り人の間で性転換すると思い込まれていた魚にマゴチがいる。抱卵しているのは大型の個体のみで、雄性先熟型の性転換をする魚と勘違いされてきた。その後の研究で雌は成長を続けるが雄は40センチくらいになるとそれ以上には大きくならないことが分かった。魚の世界では雌雄で体の大きさが著しく違うことが珍しくなく、その最たる例がアンコウ。日本で食されているキアンコウだと雌は全長1メートル以上になるのに対してオスは50センチ前後までしか成長しない。タチウオは性転換するのか、しないのか? 性転換せずに雌だけが大きく成長する魚のような気がするのだが……。
著者: へた釣り