いい年して何が理想の釣りガールだ!と思う。しかも2次元だし……。それでも川原泉の「不思議なマリナー」という漫画に出てくる釣りが趣味な女の子が、かわいくってかわいくって、こんな娘と釣り場で一緒になれないかなぁ~と、中年男子(早い話が立派なおっさん)は思うのであった。
高校2年生の白河綾乃さんという。両親と兄・姉とともに裕福でオハイソでリア充なご家庭の末っ娘なのだが、「なにしろ頭も地味なら顔も地味、性格はとゆーとこれも地味」。そんな彼女の唯一の趣味が魚釣り。「女の子の趣味としてはこれももひとつパッとしない」のだが、ご本人はあまり気にせずに、週末になると、竿とクーラーを抱えて1人で釣りに向かう。「所詮 釣りは孤独なゲームなのさ」とひとりごちる姿は、立派なこの道11年のベテラン釣り師の風情を醸していたりもする。
川原泉の描く女の子なので、とにかく自然体。周りの目を気にせずにしっかりと生きているのである。かわいいかかわいくないかですべてのものを選別するかわいい至上主義とは無縁。世の中と異性に媚びる気配はない。でも、ときどき長いものには巻かれるし、感情の揺れ方はしっかり女の子している。愛らしいし癒される。リアルな女の子のようでいてどこか珍獣めいているのが川原キャラの面白さ。そんな白河綾乃さんにも釣りという共通の趣味を通して、異性との出会いが……というのが「不思議なマリナー」の物語。
目の前でイシダイを釣りあげた男は、外道のアイナメを見事な庖丁さばきでお刺身にして分けてくれる。釣りが上手で料理上手、しかも気配り上手とくれば、釣り場の理想の男性像なわけで…偶然、釣り場で何度も顔を合わせるうちに……恋だの愛だのになかなか発展しないでほんわかムードなのが、中年男子(早い話がおっさん)からすると実に微笑ましくって大好きなのであった。「不思議なマリナー」は「空の食欲魔人」という文庫に収録されているので気になる人はどうぞ。
著者: へた釣り