美味い物を食べた時、理屈は吹き飛ぶ。ただただ「ぬふふふふふ」という不気味な声が漏れ出る。カイワリのお刺身は「ぬふふふふ」といくら言い続けても足りないお味。釣った翌日が美味しさのピークだと思う。珍しくたくさん釣れたので「ぬふふふふ」な味を延長させて楽しもうとしたが…。
カイワリは釣れても5匹くらいまでということが多いので、基本すべてお刺身で食べきる。寝かせる必要はなく、釣ったその日から美味しさ全開の魚である。初日は食感と青魚と白身魚のいいところ取りしたような脂の美味さを楽しむ。美味しさのピークは釣った翌日だと思っている。食感のよさをキープしながら脂は甘みを増す。釣行当日の夜に1尾だけ食べ、翌日は食べられるだけ貪り食う。以降は食感が少しずつ失われていく。それでも十分すぎるほどに美味しいが……ピークの味を堪能したあとでは少し物足りなさを感じる。「ぬふふふふ」の「ふ」の数が減っていき、「ぬふふ」となってしまうわけだ。
25センチ級の脂の乗りがよいお刺身適合サイズはお刺身でいただくとして、少し小ぶりの20センチくらいのカイワリを開いて干物にしてみた。小ぶりで脂が足りない分、干物にして旨みを濃縮して楽しんでやろうという魂胆だった。日持ちもする。梅雨どきだが、なんとか天日で干すことに成功し、美味しそうなカイワリの開きが完成した。大いに期待して箸をつけたが……期待が大きすぎたのか、それともカイワリは干物にするのに適してないのか、「ぬふふふふ」な美味さではなかった。不味くはない。不味くはないがカイワリらしい特徴が干物にしたことによって消えてしまった? 干さずに塩焼きにした方が正解だった?
著者: へた釣り