カサゴについて調べていると、この魚ほど不当な扱いを受けている魚はいないのではと思い始めた。へた釣りもメバル釣りではカサゴをぞんざいに扱うことがあるが、メバル・カサゴ船とはいえ、本命はメバルだから。カサゴの煮付けはメバルほどではないにせよ、十分すぎるほど美味しいぞ。
「磯のカサゴは口ばかり」という諺がある。頭(口)ばかり大きくて身が少ないというカサゴの特徴をうまくとらえているが、その意味は「口ばかり達者で身が伴わない」。ビッグマウス、口だけ番長系の人をカサゴに例えた言葉である。確かに全長に対して、身は少ないが、クセのない上品な白身は煮付けにすると最高の魚の1つだと思う。捌くときに胸鰭の後ろからではなく、エラの付け根から頭を落とすのが少しでも身を多く確保するコツ。煮付けや唐揚げにするならつぼ抜きという方法で、割り箸2本を使ってエラとワタを取り出すとよい。
もっと酷いのが「アンポンタンのツラアラワズ」。どこがカサゴに関係あるの?と思うだろうが、実はツラアラワズはカサゴの別称。カサゴの顔はお世辞にもきれいとはいえないので、「面洗わず」な魚と称されるようになった。アンポンタンもこれまたカサゴの別称。語源由来辞典には、「1789~1801年に江戸市中に出回った『アンポンタン』と呼ばれる魚(カサゴの一種)が、大きい割に美味しくなかったため、『独活の大木(うどのたいぼく)』と似たような意味で使われ、それが転じ」、アンポンタン(=カサゴの一種)は「愚かで役に立たない奴」を指す言葉になったという説が紹介されている。
気になるのは大きい割に美味しくなかったというカサゴって何ってこと? 江戸時代中期より前に最も身近な根魚の1つであるカサゴが食べられてなかったとは考えにくい。大型のカサゴであるウッカリカサゴもそれなりに美味しい魚だし…。大型のカサゴに似た魚で美味しくない魚が思い当たらない。カサゴは根魚の割には鮮度が落ちやすいので、腐りかけのウッカリカサゴをアンポンタンと蔑んでいたってことだろうか? それとも江戸時代に東京湾に生息していたアンポンタンは絶滅した?
著者: へた釣り