「不器用ですから」で許されるのは高倉健だけだ。ウィリーを巻くのに悪戦苦闘しながら、「自分、不器用ですから」とひとりごちたところで、目の前にあるのはこれじゃ釣れんだろと一目で分かる針に毛糸が絡んだゴミ。「ウィリー?」と聞かれたら「アート♪」と誤魔化すしかない。
釣り針に毛糸を巻いて、尻尾を出しときゃいいんだろと、甘く考えていた。どんな針にどんな色の毛糸をどれくらい巻くかってことばかり夢想していて、巻き方を勉強しようという気が全くなかった。緑は食わせ針で、白や夜光はアジ・サバに効果あり、ピンク(赤)は追い食い狙い。というわけで、白(夜光)、ピンク、緑、夜光の空針という4本針の仕掛けを作ろう考えていた。で、さっそく毛糸を束ねて巻き始める(右の写真は師匠のお手本)。
1つ目の自作ウィリー……なんか違うというレベルではない。なにもかも違う。一応、仕掛けの上の方から作ろうとしたので、夜光の化繊を1号のチヌ針に巻いたのだが……貧相すぎるし、グシャグチャだ。夜光の毛糸って巻くのが難しいのかも。貧相さは毛糸を2本束ねて巻けば解決できると勝手に想像。
で、2つ目の自作ウィリー。このあたりで、「自分、不器用ですから」という高倉健のセリフが頭の中でエンドレスリピートし始める。小学生の工作だってもう少しはマシ?ってレベルの出来栄えに暗澹たる気分になる。軸のボリュームは出たけど……汚い。自分が魚ならこれだけは食わんぞ。
巻き方を勉強しなくてはとネットで検索して作ったのが3つ目の自作ウィリー。「必ず釣れるぞ! ウィリーの巻き方」という図版を参考にした。いくらかはそれっぽくなってきたような気がする。パールピンクの針に緑の化繊を巻いてみた。尻尾の部分の固定がまだ雑かな? ちょっとはみ毛もあるし……。
4つ目の自作ウィリーは本日最高傑作。赤い針に赤い化繊で、3倍釣れますようにという願いを込めた。少しだけだが、釣れそうな気がしてきた。でもまだ、尻尾の部分の出方がおかしいような気がする。強く引けば細くなるが緩めるとポワッと広がる化繊の扱いが難しい。両手が使えればもっときれいに巻けるのに。
なんとか巻けそうな気がしてきたので、フラッシャーを付けて巻いてみたのが自作ウィリー5作目。フラッシャーが巻くときに邪魔で、軸に均一に化繊を巻きつけることができずに、ちょっと歪な形になってしまう。相変わらず尻尾の出方がおかしいような気がする。
で、ウィリー自作に絶望したのが6作目。全く進歩する気配がないままに、作業に飽きて、雑になっている。ウィリーってフライを自作するときに使うバイスがないと上手に巻けないのかもと無茶なことを考え始めた。バイスっていくらするんだろうと調べていると、ペンチの握りの部分に輪ゴムを巻いて、バイスの代わりにするという方法が紹介されていた。
そういえば、師匠からのメールにも「ウイリーなんてペンチとハサミがあれば作れる」とあったのを思い出す。そっか! ペンチはバイスの代用に使うのか! 今週末の釣行にへた釣り印の自作ウィリーを間に合わせるためにも、今晩中には「自分、意外と器用ですから」な状態に持っていきたいものである。
著者: へた釣り