淡路島に行くとトツカアジなるブランドアジが釣れると知り、それは釣って食べなきゃと決意した。名前の由来も面白いし、淡路島南東の沼島近辺のアジは、それなりにお値段の張る日本料理店で珍重されているアジだと聞くと、食いしん坊なので釣って食うのが人生の一大事になってしまう。
10本(トう)の指でツカむほど大きいからトツカアジ。和歌山の紀南~淡路島南部でそう呼ばれているらしい。写真をみると、瀬付きの黄アジのようで、体高もあるしゼイゴも太く、いかにも美味しそうだったり。同じ淡路島でも北部、明石周辺で釣れたアジはメクリアジになる。これも瀬付きのアジらしく体高があり肉厚。三枚に下ろしたあとで皮を手でメクって刺し身にするためにこう呼ばれるそうである。サイズはトツカアジより小ぶりになって25センチ以下がレギュラーサイズのようだ。
ブランドアジの代表といえば関アジなわけだが、九州と四国の間の豊後水道の狭まった部分、豊予海峡で釣れるアジ。これが、大分県の佐賀関で水揚げされれば関アジ、愛媛県の佐田岬で水揚げされれば岬(ハナ)アジ、同じ愛媛でも佐田岬の付け根、八幡浜で揚げられたものは媛っ子アジ、三瓶町のものを奥地アジと呼ぶようだ。黒潮と瀬戸内海の潮流が混じり合う「速吸の瀬戸」と呼ばれる海域で釣るため80号~120号のビシカゴを仕掛けの一番下に付けた胴突きサビキ仕掛けで狙うようである。
日本海側に抜けた黒潮の流れるポイントにもブランドアジは存在する。山口県萩市の外海にある「アカバ瀬」「カキノ瀬」「角島グリ」「魚城」と呼ばれる瀬で釣れるアジが瀬付きアジ。40upの瀬付きの大アジも釣れている。コマセシャクリ釣りでイサキやタイが本命でアジも混じるって感じ? もう少し東。島根県の浜田市のアジがどんちっちアジ。一般のアジが脂肪含有量3.5%とされているのに10%超えのものだけをこう呼ぶらしい。浜田沖もヒラマサやマダイ狙いの船がほとんどで、大きなアジでもうれしいゲスト扱い。
最後に関アジ以外の九州のアジ。なんとなく名前に聞きおぼえがあるのが長崎県五島灘の瀬付きのアジを指すごんあじ。五島灘の「ご」と黄金色の「ごん」を合わせて命名されたそうである。五島列島と西彼杵半島に挟まれた水域で釣れる250グラム以上のアジをごんあじと呼ぶらしい。ごんあじの中でも野母崎で水揚げされる大型のものを野母んあじ。宮崎県延岡市沖の日向灘のアジを北浦灘あじ、鹿児島県阿久根近海で釣れるアジを華あじと呼ぶらしい。
著者: へた釣り