高知市には小学2年生から3年生の夏まで1年半だけ住んでいたことがある。父の転勤の関係で何度か住む場所を変えたが、高知ほど自然が身近にあった場所はない。近くを流れる神田川は生まれて初めて釣りをした川。40年以上経ち川の様子は変わっていたが、今でも魚は釣れるようだ。
高知市内を流れる鏡川に合流する川が神田川。「こうだがわ」と読む。鏡川はアユの遡上もある大きな河川だが、神田川は川幅が10メートルもない。この川のすぐ近くに1年半だけだが住んでいた。学校もこの川沿いの上流にあったので、毎日神田川沿いを行ったり来たりして過ごしていたわけだ。30センチ近くはありそうなウシガエルが夜ともなればけたたましく鳴き、家の網戸にはカブトムシやクワガタを含めいろんな虫が光を求めてやってくるような場所であった。野球のバットとグローブ、虫取り網と竹の釣り竿さえあれば小学生なら年中遊びには困らない。釣りのてほどきは横に住んでいた3つ年上のお兄ちゃんから受けた。
狙うポイントは水の流れの速さを調整するために設置されていた水門。水門の下流側は深くなっており、上流に向かって泳いできた魚がそこにたまるので天然の釣り堀状態。田んぼを掘り返せば餌のミミズはいくらでもいる。ミミズをちょん掛けして川の流れに乗せてウキを流せばフナや高知ではハヤと呼ばれていたウグイの仲間がいくらでも釣れた。ときにはナマズやライギョといった竹竿では勝負できない魚が食ってきて竿を叩き折られたり、糸を切られたり。使えなくなった竿は玄関に置いておくと、父が修理しておいてくれ、翌朝には使えるようになっていた。今でもナマズやライギョは神田川のこの付近のポイントで狙えるようで、川の上を通っている電線にはルアーがいっぱいからみついていた。
神田川の魚の思い出はもう1つある。今ではコンクリートの護岸になってしまったが、43年前の川岸は石を積んだものだった。石と石の隙間には天然ウナギが入りこんでおり、近くのおじさん(漁師さん?)が針金にドジョウを巻き付けた道具を石の隙間に差し込んでウナギを獲っていた。このおじさんは小学生を見つけるとウナギが逃げたらすくう役をやってくれと言ってくる。ほとんど失敗しないのだが、ごくたまにウナギがうまく引っ掛けられずに川の中を泳いで逃げてくる。おじさんの周りに待機していた小学生たちは虫取り網でこれをすくう。うまくすくうと50円もらえる。当時の50円は瓶のコーラ1本分。ウナギをすくえたらみんなで1本のコーラを回し飲みした。
著者: へた釣り