昨夜のうちにアサリを買い、早起きして明日のTKB決勝用のハギポンアサリを作るつもりだったが、まさかのアサリ売り切れで途方に暮れる。船酔い体質なので寝不足で船に乗りたくはない。お昼休みに家に帰ってハギポンの密造。×社員という自覚はあったが、これでは×××社員だ。
朝、少し早く出社する。で、深刻に何かを考えているフリ。周りが声をかけづらい雰囲気を演出してみる。確かに深刻に悩んではいたが、ハギポンアサリをどうやって間に合わせようかってことをずっと考えていたのだから迷惑な話だ。待っていたのは昼休み。家の周りでアサリを売ってそうなスーパーを思い出し、どの順路で回れば安く大量にアサリを調達できるかを考えていた。会社の近くでアサリを買っている姿を目撃されるわけにはいかない。普段は行かない近所のスーパーの鮮魚売り場にアサリがあったかどうかを真剣に思い出そうとしていた。
お昼休みになったらダッシュでスーパー巡り。いつもなら100グラム100円以下で買うようにしているのだが、今日は値段を考える余裕なし。少々割高でも見つけたら買いあさる。なんとか2キロ調達し、これまでに剥いたことないスピードで剥きまくる。俺ってこんなに早くアサリを剥けたっけ?と自分でも驚いた。それでも全部剥き終わって時計を見ると1時15分。お昼休みは終わっていた。30分と少しで2キロ剥いたんだから新記録だ。二度とこんな慌ただしい作業をしたくはないけれど……。
アサリを剥き終わったらハギポン密造。大会なので、いつも以上にアミノ酸増し増しに仕上げてみた。集魚効果が高いと思っているアルギニンなんていつもの倍。溶けきらずに剥き身汁の底の方に残っていたが気にしない。明日のために買い集めて実験してきたアミノ酸、今、惜しんでは後悔しか残らない。ハギポンにまみれたアサリを冷蔵庫にしまい、これで明日は勝負できるとホッとして会社に戻る。帰社時刻は…2時過ぎ。急にスッキリした顔をしていると怪しまれるので、深刻に何かに悩んでいるような顔をしたままこの原稿を書いている。
著者: へた釣り