午後も堤防に出撃。昼すぎから急に風が吹き始め窓がピューと鳴っている。止めとけばと思う。でも行く。せっかくの伊豆。釣らなければという義務感のようなものに突き動かされる。干潮だし絶望的だよなぁと思うと、頭の中で子連れ狼の歌が鳴り始める。しとしとぴっちゃんしとぴっちゃん♪
海に突き出た堤防の崩れかけたケーソンで
へた釣りは魚を待っていた。
初日の昼に釣れるはずの魚であった。
それが三つ目の朝となり、
四つ目の夜が来て、
五つ目の朝は……
しとしとぴっちゃんしとぴっちゃん♪
しとぴっちゃん♪
どうしてこんな歌を急に思い出したのかというと、どうも今日釣れないというだけでなく、今後の見通しもかなり悪いから。
合宿の三つ目の朝は本日の朝。呪われてるような気がし始めた朝だ。四つ目の夜…つまり明日は強風でイサキ五目の出船が中止になった。風、波、雨の三重苦になりそうな予報。頑張れば釣れるという感じですらなさそう。そして五つ目の朝は…今合宿のメインイベントである利島遠征の日なのだが、出船するのかなぁ?と不安。出船したとしても遠征なので船の上で12時間……海が荒れていて船酔いすると地獄の苦しみが待っている。本当に呪われているとしか……
へた釣りは雨の中…
へた釣りは風の中…
へた釣りは船の中…
ああ、へた釣り、もう47才
しとしとぴっちゃんしとぴっちゃん♪
あ、釣行記だったね。釣りに行った話を書かないとね。風が10メートル近く吹いている感じだったので、ラインを風に取られると釣りにならないウキ釣りは諦める。しかも初日以上のドド干潮なので穴釣りで時間をつぶそうにも無理。テトラに降りるのはこの風だと怖すぎる。というわけで、ちょい投げするしかなかった。10号の錘をエイッ!と投げ込んだら風がラインを煽って、錘が勝手に転がっていく。サビかなくても勝手に広い範囲を探ってくれる。へた釣りのやることは糸ふけを取ったり、錘が底に引っかかったら竿を煽って外してやるだけ。
堤防の上で座って、タバコを吹かしながら竿先を眺めているだけ。これはもう釣りではない。時間を潰しているだけ。頭の中はしとしとぴっちゃんしとぴっちゃん♪ 一度だけ竿先がプルルと揺れた。きれいなオレンジ色したオハグロベラのメスだった。針に勝手に掛かってくれてありがとう。でも、君程度じゃ憂さは晴れない。
しとしとぴっちゃんしとぴっちゃん♪
しとぴっちゃん♪
著者: へた釣り